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健康コラム

くも膜下出血から奇跡の生還を果たし、リハビリを続けながら執筆活動を行うコラムニスト・神足裕司が日常をつづっていきます。

旅行


ゴールデンウイークがやってきた。

身体を壊してからは、毎年友人家族と箱根のロッジに泊まることになっている。総勢10人ほどがコンドミニアムのような山小屋を連棟で借りる。一棟は障害者用。続きのもう一棟は健常者用。

健常者用と何が違うかと言えば、まず、入り口にスロープ。駐車場から一番近い場所にある。箱根の山の斜面に立っているので他の棟には残念ながら車椅子ではかなりのデコボコ道を行く。

そしてキッチンは車椅子で作業ができやすい高さに設定されている。ちょっと低めで車椅子で接近しやすいようにもなっている。風呂場は、車椅子の人がそのまま風呂場の床に移動しやすいように高床になっている。トイレも広め。洗面所にも車椅子で鏡が見やすいように鏡は斜め下に向いている。

ベッドルームだって車椅子で移動しやすいように普通の部屋がツインと二段ベッドの3人部屋のところベッドは一つない。(二段ベッドはそのまま)

車椅子を使ってはいるがなんでも自分でできる、そんな障害者にとっては完璧な宿泊施設だと思う。

ところがボク以外の仲間にはこの上なく使いづらそうだ。お風呂も洗面所もキッチンも。そういうボクだってそのお風呂では入れないし残念ながらほとんど自分ひとりではなにもできない。

そうであれば、健常でないのはボクだけなのだからこの際、健常者の普通のロッジにしてはどうなのか?という話になった。問題は駐車場からのデコボコ道とスロープがないので数段階段を上がらなければいけない。あとはベッドルームに車椅子ですんなり入れないかもしれないところ。いつもお願いしている障害者用の隣の健常者用とさらに隣のもう1棟。そこを借りることとした。

スロープが無いので数名で車椅子ごとあげてもらうことになる。申し訳ない。けれど、そのほうがスムーズに行くんじゃないかと思っている。施設だって一人ひとりのニーズになど合わせられるわけもなく、ひとつのターゲットにあわせたつくりとなるのは当然だ。ここがあってくれたお陰で毎年ボクは旅行に出かけられているのだ。

一方、以前取材で泊まった温泉ホテルは、ユニバーサルデザインのホテルを売りに1フロアー全ての部屋が障害者でも使えるようになっていた。ここの考え方は「誰でも同じように使える」を目標にしているので車椅子でもベビーカーでも入りやすいように段差が無い。室内の通路も広め。介護用の風呂の椅子や手すりなども頼めば用意がある。介護食にもしてくれる。しかも見た目が普通の人が泊まる部屋と障害を持った人の部屋とひと目でわからないような快適さがあった。

どちらも我慢しないで快適にすごせる空間。これこそいまからの時代になくてはならないコンセプトだと思う。さりげなく障害者用。さりげなく介護用。さりげなくベビー用。そこに集っているのを想像するだけで楽しくなる空間だ。これからもっとそういうところが増えるといいと思っている。


著者紹介

神足裕司(こうたり ゆうじ)

1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。 朝日新聞月曜朝刊「コータリンは要介護5」連載中。

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