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健康コラム

くも膜下出血から奇跡の生還を果たし、リハビリを続けながら執筆活動を行うコラムニスト・神足裕司が日常をつづっていきます。

食事が進む

うえのあなご

82歳になる義父の口癖が「なんか食欲無いなあ」である。「おじいちゃんごはんだよ」そう呼ばれて食卓に着くのだが、そうまず言う。作ったおばあちゃんは不満顔。おじいちゃん曰く「昆布の佃煮があればいい」という。「手の込んだ料理なんていらない」そういうことらしい。旨いごはんに昆布があれば。東京産まれのおじいちゃんも大好きな佃煮が日本橋にあるらしいのだ。

そこで思い浮かべるのは、熱々、ツヤツヤの湯気が立つ茶碗の中の飯粒に山椒の効いた昆布の佃煮を乗っける。箸でさっくっと口に運ぶ。「ほっっほっ」熱々のご飯とパンチのきいた山椒のピリリが絶品である・・・どう?こう想像すると食欲もわく。

そういうボクもいまは食欲があるほうでもない。自分を、食事するという行為の最高潮に盛り上げることが必要となる。たとえばお茶漬け編。鮭は塩鮭。白く粉がふくようなのがいい。
たらこは周りを焦がしぎみに半生で焼こう。梅干は果肉がたっぷりなのを、種を取っておこうか。海苔はぱりぱりのを、細かく細かくちぎっておく。三つ葉やあられもあったほうがいい。わさびは生を奮発してサメの皮でたっぷりおろそう。ちょっと大振りの茶碗を用意してそこにさっくっとご飯を盛る。好きなものをトッピング。熱々の番茶か抹茶塩にお湯でもいい。
サイドメニューに佃煮やおしんこがあればなおいい。こんな贅沢なお茶漬けは大ご馳走だ。佃煮やおしんこの皿にも最大の注意を払う。想像しただけで、食欲の無い今でもすぐ食べたい。日常の食事が食器やこだわりの食べ方で食欲も復活する。

しかし、やっぱりこれだというものがある。うまいふぐのさしみをほんのちょっと。むさしのうどんや、うえののあなごもいい。そうそう、広島の実家のちかくのお好み焼きもいいなあ。へらで鉄板からいただく。牡蠣小屋でぱちぱち飛んでくる殻に注意しながら食べる焼き牡蠣もいい。ちりめんじゃこを量り売りで買ったらちりめん山椒をつくろうか・・・。なんだ、まだまだ食べたいものが思い浮かんでくる。そう思って考えているものは故郷の味ばかりだったりする。やはり故郷の味は何歳になってもなんだなあ。


著者紹介

神足裕司(こうたり ゆうじ)

1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。 朝日新聞月曜朝刊「コータリンは要介護5」連載中。

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