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健康コラム

くも膜下出血から奇跡の生還を果たし、リハビリを続けながら執筆活動を行うコラムニスト・神足裕司が日常をつづっていきます。

青山アンデルセン


7月31日に青山アンデルセンが一度店を閉めると聞いて、どうしても一度行っておかねばならないと思った。本通りにあるあのアンデルセンの東京店だ。

大学で広島から東京に出てきたとき青山の一等地に「アンデルセン」があることを誇らしく思った。学生の分際でなかなか青山のしゃれたパン屋さんに行くのは敷居が高かったけれど、通りから眺めるだけでなぜかホッとした。そのころ「ポパイ」「アンアン」なんていう流行に敏感な雑誌の写真にも、アンデルセンなんかのフランスパンを小脇に抱えているところがよく使われていた。

アンデルセンは広島の人ならご存知の方も多いと思うが、1959年に日本初のデニッシュペストリーを誕生させた。本通りのすぐ裏に住んでいたボクは、縫い子さんが買ってきてくれたダークチェリーのデニッシュペストリーを食べた時、「この世のものではないなあ」そう思うほど衝撃を受けた。それがパンだということもまだまだ幼かったボクは不思議でならなかったのを覚えている。当時は食パンを何枚切りと言って切ってもらったり、コッペパンにジャムをつけてもらうかピーナッツバターをつけてもらうか?ちょっと変り種でハムをはさむか・・・それがパン屋さんのボクの印象だった。こんなにいい香りのする煮たサクランボ。全てが新しくて衝撃的だった。きっとまだ幼稚園ぐらいのことだったと思う。そのときからアンデルセンはボクのなかでは特別な存在となった。

青山のアンデルセンが今の場所に移ったのは、たしかボクが結婚する年だった。1985年。焼きたてのパンでオープンサンドなんて今までにないスタイルで話題になっていた。ボクは結婚する彼女を連れてアンデルセンに行った。「よく来るよ」そういう東京生まれの彼女に「アンデルセンって広島の会社なんだ」そう自慢した。「へ~そうなんだ、知らなかった。東京の店だと思ってた」。広島の両親に彼女を連れて帰ったときも、むさし、酔心、お好み焼きに、すし屋に、鉢の木とアンデルセン。アンデルセンは外せなかった。その立派なレトロな建物に彼女も驚いていた。

結婚しても必ず帰省したときは立ち寄っていた。栗原はるみさんのコーナーや外国から届く調理器具や食器。東京への土産にはかならず童話のクッキーを買って帰った。夏の帰省、正月の帰省、5月・・・いつも違うクッキーで楽しませてくれた。

上の階のレストランでちょっとおしゃれに、1階でモーニングを。そうそう、発病後広島でサイン会をしたときも上のパーティー会場をお借りして打ち上げを行なった。こんなに思い出いっぱいのアンデルセンだ。広島の人だったらきっとそれぞれの思い出があることだろう。

青山のアンデルセンに行ったら店員さんはみな親切だった。車椅子のボクを従業員用のエレベーターで要望どおり地下のカフェに通してくれた。広島では1階のカフェに当たるところだ。1階でパンを買って一応メールしてみた。「今青山アンデルセンにいる」。現在アンデルセンの社長である同級生の岡田君だ。「6時には青山に行く。待ってて」社長になってから岡田君に会うのは初めてだったがいつもの岡田君だった。当たり前か。岡田君が教えてくれた。青山は2022年、広島のアンデルセンは2020年に完成予定だと。ボクの大好きなアンデルセン、新しくなった店にも行ってみたいと思う。



著者紹介

神足裕司(こうたり ゆうじ)

1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。 朝日新聞月曜朝刊「コータリンは要介護5」連載中。

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