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健康コラム

くも膜下出血から奇跡の生還を果たし、リハビリを続けながら執筆活動を行うコラムニスト・神足裕司が日常をつづっていきます。

旅行


車椅子での旅行というのはとても大変だ。以前、バニラエアの奄美空港での車椅子拒否の事件にもあったように。

あたりまえの旅を普通にしようと思ってもなかなかできるわけではない。飛行機で行こうと思っても、その木島さんの事件で見直されはしたものの、奄美空港のLCCの飛行会社には車椅子を上げるリフトすら設備になかったのだから。

ようやくその事件を受けて飛行機会社に車椅子用のリフトが義務付けられた。考えてみれば、格安に旅行したいという考え方とはまったく反対にあるのが障がい者の旅であるようにも思える。とにかく費用はかかる。それでも行けないよりはずっといい。

ようやく「車椅子でも楽しい旅!」と各社が声をあげ始めた。HISのバリアフリー旅行「たびのわ」だったり、ボクも取材したことのあるクラブツーリズムの旅は「トラベルサポーター」という一般の方が一緒に旅行してくれるシステムを導入。これに関しては、またゆっくり書きたいと思う。

こんな旅もある。

以前「娘が成人したら2人旅をしようと思っていたが身体がこんなになってしまったら無理だ」という話をしていたら、雑誌の企画で「それ実現してしまいましょう」と宮古島に娘と旅をしたことがあった。

「何をしたいですか?」と聞かれ「普通でいいんだよ」と答えたが、その普通がわりと大変なのだ。障害を持った自分が中心ではなくて娘も楽しんでもらいたい、父が20歳になった娘のお祝いに出かけるのだから。



一番問題になったのは「下の世話」。娘は自宅でも進んで介護に参加してくれている。移乗なんかはヘルパーさんなんかよりうまい。けど、娘に下の世話をしてもらうのは父として気はずかしい。そこで、介護が必要な人専門の旅行会社に頼んでその家族に合った旅を一から作ってもらった。

娘と二人の宮古島ツアーには自分の好みの飛行会社を選び、旅のヘルパーさんという人に同行してもらう。その人の旅費も食事代も持つことになるが(ずっと介護が必要なので)ほとんどのリクエストに答えてくれる。例えば、朝起きたら着替えや洗面をしてもらう。宮古島のきれいな海にも入りたいしプールにも入りたい。それもすべて一緒にやってくれる。

夕食は海の見える雰囲気のよいところでとりたい。更にいえば、娘ひとりに買い物の時間やエステのゆっくりしたリゾートの時間だって与えたい。そんな盛りだくさんのリクエストに応えてくれる。

ボクは寝る支度をしてもらったら朝までは違う部屋を選択したが、同じ部屋に泊まって夜間の介護が必要ならば割り増しとなるがやってもくれる。全てが思い通りになる。

ただ、高価ではある。その会社に聞くと「おばあちゃんのお祝いに」と一生に一度の大イベントとして行なうことがあるけれど、気に入って何回もリピートしてくれるお客様も多いんですよ」という。さらに、いつも家族に迷惑をかけられないと一人で参加する高齢者や障がい者も多いと聞いた。

我が家の場合、ボクも一緒の家族旅行を年に1-2回はしているが、温泉に行ってバリアフリーの部屋に泊まっても温泉に入れることは少ない。バリアフリーの部屋の認識がまだまだであるともいえる。高齢者や障がい者の一人ひとりのニーズに応えるのはなかなか難しいとは思うが、ようやく日本も2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて考え始めているようでもあり、その入口ぐらいにはきたのかなと思う。


著者紹介

神足裕司(こうたり ゆうじ)

1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。 朝日新聞月曜朝刊「コータリンは要介護5」連載中。

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