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サイエンスカフェin広島

あぶないですよ! その転び方 ~骨粗しょう症性骨折を未然に防ぐ~

サイエンスカフェin広島


マンモスの復活計画など、ユニークな研究で知られる近畿大学生物理工学部の本年度公開講座のサイエンスカフェin広島が6月14日、広島市中区の広島国際会議場で開かれました。ここで速水尚教授(人間工学科)が『あぶないですよ! その転び方~骨粗しょう症性骨折を未然に防ぐ~』と題して、骨粗しょう症による骨折のリスクや骨折しやすい転倒姿勢などについて生体力学の研究成果を講演しました。講演と配布された資料を基に概要をWEB用に再構成しました。

あぶないですよ! その転び方~骨粗しょう症性骨折を未然に防ぐ~


速水尚教授(人間工学科)

講演者: 速水尚(はやみ・たかし)
近畿大学生物理工学部

日本の人口はこの150年間で大きな変化があり、政府は高齢者対策に力を入れています。その指針として示された「健康日本21」では、認知症や寝たきりにならないで生活できる期間である「健康寿命」を延ばそうと呼びかけています。広島県の健康寿命は男70.2歳、女72.5歳です。健康寿命を延ばすことは、自立して生活できる期間を長くすることで、家庭や社会で介護などの負担を軽減することにつながります。

骨粗しょう症は治る病気

骨粗しょう症は女性に多く、「骨」が密ではなくまばらな「粗」の状態となり、高じて鬆(す)が入る病気です。昔は加齢による単なる老化現象とされていましたが、病気としての認識が高まり治療法もあります。
歩行、着座、起立といった基本的な運動を支配する股関節を形成する大腿骨頭部は、骨粗しょう症によって骨折しやすくなる部分です。ここを骨折すると、歩けなくなるなど生活に必要な機能を失うことになります。骨折治療のための長期入院は、寝たきりや認知症の原因の一つです。骨折は、寝たきりになる原因の中で脳卒中に次いで2番目に多く、寝たきりになれば介護のための家庭や国の負担増につながるので重要なテーマです。


股関節の骨


構造学的に股関節の骨を見てみましょう。球関節と呼ばれる、ほぼ球形をして大腿骨頭を包み込むように寛骨臼(かんこつきゅう)があります。どの方向にも自由に動かせる構造になっています。体重を支える骨幹部と大腿骨頭の間が「大腿骨けい部」です。体重などここに作用する荷重は、てこの原理で大きく増幅され、骨折しやすい構造になっているのです。

大腿骨頭は、構造を軽量にするためや衝撃を吸収する役目を持つ「海綿骨」と呼ばれる多孔性の骨でできています。ここが骨粗しょう症になるともろくなってここにかかる力を分散できなくなり、大腿骨けい部の骨折を招きます。

骨粗しょう症と転倒は、大変深い関係にあります。65歳以上の女性高齢者854人の転倒状況を調べた調査では、転倒した人のうち骨折したのは10%です。転倒すれば必ず骨折するというわけではありません。その骨折は80%近くが大腿骨けい部です。大腿骨けい部を骨折すると、そのうちの5%~20%が寝たきりになります。
骨折すればそのほとんどが大腿骨けい部であること、その背景には骨粗しょう症があるというわけです。骨折の原因となる転倒を防ぐことの重要さは明らかです。

老化に伴って転倒しやすくなりますが、かと言って外出しないでいると寝たきりや認知症になった事例もあります。超高齢化社会に暮らすには、骨折に伴うADL(日常生活動作能力)の低下が、QOL(生活の質)に大きく影響することを認識する必要もあります。

転倒すれば10%骨折

生体力学(バイオメカニクス)で転倒について実験などで調べたところ、斜め後方と側方転倒が最も危険であることが分りました。

この2つの倒れ方は、大腿外側へ衝撃力が直接作用してしまうタイプの接地が避けられません。そうして大腿外側(大転子:股関節近くをなでたとき、大腿骨の外側に出っ張った感じがする部分)を打撲すると、大腿骨けい部骨折を起こしやすいのです。その他の転倒では、大腿外側を直接には打撲しません。転倒しても必ずしも骨折しないのは、転倒姿勢の違いによるものと考えられます。


岡正典 他、転倒の研究、日本臨床バイオメカニクス学会誌、24、341-348、2003.一部改変


大腿骨頭部を構成する海綿骨は、骨粗しょう症によって強度が著しく低下するのですが、その強度は、どの方向からの力に対しても同じように低下するのではありません。転倒しても必ずしも骨折する訳ではない理由につながります。

女性の場合、骨密度は女性ホルモンの減少によって低下します。そうなると骨の強度が弱くなり、転倒によって骨折するきっかけになります。骨密度が正常値の70%以下になると骨折危険度が増加するので、骨密度検診が重要となります。

骨密度は「骨の量」を示すのですが、これとは別に、骨の質すなわち「骨質」が骨折に深くかかわっていることも分りました。密度が十分でも、骨梁と呼ばれる海綿骨を作る細い骨にクラックが入り力学的に弱くなっている場合があります。

骨質の簡易な検診方法はまだ開発されていません。今後研究が進めば、本当に骨折する可能性の高い患者を見つけ出し、徹底した骨折予防対策を施すことで、寝たきりや痴呆症を防止できそうです。

まずリスクの認識を

斜め後方への転倒が深刻な骨折を招くことが予測できるのですが、まだ詳細な研究に至っていません。転倒予防には、本人自身がハイリスクの状態にあるかどうかを知ること、家族も転倒のリスクを知ることが大切です。

転倒によるものも含む「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になるロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)についても知っておくといいでしょう。日本整形外科学会の予防啓発のページ「ロコモチャレンジ」で確認できます。

骨粗しょう症の8割の人が未治療という現実があります。60歳代で骨折すると5年以内に骨折する可能性は通常の17倍になります。骨折する前にしっかり対処しなければなりません。

厚生労働省などが作成した「転倒リスク評価表」で21項目の質問で合計10点以上だったら医師に相談し、必要なら大きな病院で鑑別診断(症状・所見がどのような疾患に由来するのかを見極めようとする診断)をしてもらいましょう。X線で正確に測定できます。ここで骨密度が低下していたら薬で治療します。薬は年々進歩しており、主なものに骨萎縮を抑制する薬、骨密度を高める薬があります。



広島市は転倒予防教室を開催しており、ホームページには「介護予防事業のご案内」があります。

広島県や広島市の骨粗しょう症対策は大変充実しています。また市内を走るバスの車内放送で「停まるまで席を立たないでください」と注意するのは、バスの揺れで、乗客の重心が大きく動揺して転倒しやすくなることが明らかなので、そのことに警告を出しています。特に高齢者は、とっさの行動が遅れがちで、重心を安定させる筋力も低下している場合があるので、このことをよく認識して、転倒防止に努めましょう。

いろいろなグッズ

つまづき転倒の対策グッズとしては、株式会社コーポレーションパールスター(呉市安芸津町)が開発した、つま先が上がった「転倒予防くつ下」があります。

転倒などで大腿骨けい部への衝撃を低減する用具として、大腿骨けい部骨折防止のパンツ「ヒッププロテクター」があります。

女性の場合、10代から50代は食事などで骨密度をしっかり上げておくことが大切。特に若い女性は骨にとって大切な栄養素であるカルシウム、ビタミンK、ビタミンD、マグネシウム(「カケドマ」と呼ぶ)を摂り、日光を浴びて気持ちよく運動するようにしましょう。このほか、自分の足の裏に気をつけるようと意識すると転倒しにくくなります。

講演会資料にある参考サイト


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