文字サイズ
  • 文字サイズ大
  • 文字サイズ小

認知症 第2章


放送を聴く

放送日

放送:2017年4月5日(水)
ゲスト:心療内科クリニック リュミエール 片山真一医師
パーソナリティ:おだしずえ、井筒智彦

認知症について、前回は、治る認知症もあるということや、認知症の物忘れと、老化の物忘れの違いについてなどを、教えていただきました。
今回は、認知症はどんな病気なのか、さらに、物忘れ以外の症状について、心療内科クリニック リュミエール 片山真一院長にお話をうかがいました。

今回のポイント

  1. 認知症とは?
  2. どんな症状があるの?
  3. 認知症の薬はあるの?治療法は?

まずは、認知症ってどんな病気なのか、「認知症」・・・よく考えたら難しい言葉ですね。

そうですね、私も改めて「認知」という単語について、辞書で調べてみました。

にんち【認知】 (大辞林 第三版より)
①それとしてはっきりと認めること。 「目標地点を認知する」 など。
② 法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、親が戸籍法の手続きによって自分の子とする。 「子供を認知する」
③ 〘心理学〙 〔英語:cognition〕
  知覚だけでなく,推理・判断・記憶などの機能を含み,外界の情報を能動的に収集し処理する過程。

認知症でいう「認知」は③に近い意味合いになります。
「認知」とは複雑なことを処理する「脳の働き」のことと考えていいと思います。

人の脳の働き(認知機能)
  • 記憶する
  • 時間や場所、人を認識する
  • 読み書きをする
  • 言葉を話す
  • 計算をする
  • 道具などを使いこなす
  • 物事の善悪や共通点等の判断をする
  • 出来事などを理解する  

ということは、複雑なことを処理する「脳の働き」ができなくなるのが「認知症」というわけですね。

「認知症」とは、複雑なことを処理する脳の働きである「認知機能」全般が急激に低下する病気で、そのために「日常生活に支障をきたす」症状全般の総称のことです。つまり、単なる物忘れだけではないということです。

では認知症の症状について、教えてください。

認知症の原因は脳の細胞が変性することといわれていますが、症状としては、
脳細胞が委縮したり変化し、脳本来の機能の傷害を受けたことによる「中核症状」と、その「中核症状」がさらに原因となり、本人の性格や環境の影響を受けて生じる「周辺症状」とに分けて考えることがよくあります。

中核症状

ではまず、中核症状について、詳しく教えてください。

認知症の直接の原因である「脳の細胞に変化が起こる」ことでの症状を「中核症状」といい、認知症の方であれば誰しもが抱える症状のことを言います。
例えば、記憶障害、見当識障害、実行機能障害、理解判断能力障害、計算能力障害等があります。



中核症状と具体例

症 状具 体 例
記憶障害物事を記憶する力が低下。
特に、直近の出来事について覚えていられなくなったり、経験、体験のすべてを忘れてしまう。
見当識障害見当識が低下。
日時や場所、人がわからなくなったりして、自分の置かれている状況が分からなくなる。
実行機能障害普段できていた行動が実行できなくなる。
料理の手順やトイレの手順が分からなくなって、順序立てた行動ができなくなる。
判断能力障害理解・判断能力が低下。
「暖かくしましょう」と言われても抽象的な表現が理解できず、厚着をしようと思えないなど、善悪の判断、場に即した行動ができなくなる。
その他計算能力の低下。
運動マヒがないのに、着衣ができない、はさみが使えないなど。

では、周辺症状について、教えてください。

認知症の「中核症状」により現れた症状が、さらに、本人が元々持ち合わせている性格や置かれている環境の影響を受けて派生的に表れる症状もあり、これを「周辺症状」といいます。
「行動・心理症状」とかBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)という略語で表現することもあります。
例えば、今までできていた掃除や洗濯などの家事が認知症の中核症状により、上手くできなくなってきたとします。それを気にしない人もいれば、深く落ち込む人もいます。元々落ち込みやすい性格の方の場合「不安」が強くなったり、さらには不安から「徘徊」という症状が出てくることもあります。また、自分に厳しく「何故出来ないんだ」と自分を追い込むような性格の方だと焦りや怒りといった「焦燥感」に変わり、さらには、暴言や暴力に訴える人もいます。これらはすべて周辺症状にあたります。その人の性格や、生活環境によって周辺症状の出方が異なってきます。



薬の服薬や、環境や接し方の工夫で症状の改善は期待できますか?

2月のこの時間でお話した、治る認知症「正常圧水頭症」や「慢性硬膜下血腫」に対しては外科的アプローチで症状が改善する場合がありますが、それ以外の認知症の中核症状に対しては脳機能の低下を進行をゆっくりとさせる薬が処方されることがほとんどです。ただし、一度変性したり、委縮した脳を元に戻す治療薬は残念ながら、まだ見つかっていません。そういった意味では、早めの治療開始や予防が大切となってきます。この予防については、次回の6月のこの時間で改めてお話しできたらと思います。

「認知症」の「中核症状」については、治療薬はまだ見つかっていない。
「周辺症状」については、いかがでしょうか?

周辺症状に対しては、例えば暴言や暴力といった症状がある場合には気分安定薬や抗精神病薬を処方したり、深夜の徘徊を防止するためには睡眠薬が処方される場合もあり、症状に応じて医師の判断によって処方されることになります。
ただ、周辺症状の治療や症状改善には、生活環境の調整や認知症の方への対応の仕方の改善が効果的だとも言われています。
そのためには、周辺症状が起こる原因を個別のケースごとに考える必要があります。

個別のケースごと、といいますと・・・?

例えば、入居施設で、目の前の別の利用者さんの食事を勝手に食べるなどの行為がたまにあります。それに対して「今のは悪いことですよ、ダメです」と注意しても認知症の方は中核症状のため、善悪の判断はつかなくなっていることがあります。他者から注意されても、食べたいのに食べさせてもらえない理由が理解できず、認知症の方はイライラしたり、不安を助長したりしてしまいかす。これが周辺症状です。

こういった認知症の方には「説得よりも共感」が必要です。認知症の方のこの行動を「盗み食い」と考えるよりも、まだ食べられます、食べたいですという「意思表示」だと捉えてください。

もちろん、その方の病気や食事摂取状況等にもよりますが、本当にお腹が空いている場合には、「お腹がまだすいているんですね」と行動の理由に理解を示し、新たに食事を提供し、「ここは安心して暮らせる環境ですよ」ということを繰り返し伝えていくことで、不安やイライラなどの症状も穏やかになっていきます。

周りの人が対応に困っている症状や感情・行動の背景には、その人なりの理由が隠されていることがあるのです。

また、周囲の人の心配や負担の大きい周辺症状に「徘徊」という症状があります。

徘徊に関しての家族の対応ですが、動き回ったり外へ出たがったりしている方を直接止めようとしても逆効果です。徘徊の原因や理由も様々あり、そこを理解することが肝心です。

「会社に行かなくては」、「ここは自分の家ではないから、早く自宅に帰らなくては」といった本人なりの理由でソワソワ落ち着かずに、家を出て歩き回ろうとする場合には、「今日は寒いので、上着を探しましょう」「会社に行くのなら、持っていく鞄の中身を一緒に探しましょう」などと声をかけてみましょう。一緒に探し物をしたり、準備をしているうちに、関心が他に移っていき、徘徊しようと気が消えていくことがあります。

方向や距離や位置が把握できなくなって自宅の中でも迷ってしまう場合(視空間認知症)もあります。そんな時は、家の中にわかりやすく大きな張り紙をしてあげると良いでしょう。夜中に彷徨ってしまう場合には、真っ暗にならないように部屋と廊下に常夜灯などを点けておき、トイレまでの道筋がわかるようにしておくなど環境づくりの工夫をすると効果があります。

その方のもともとの考え癖や性格、若かったころの職業など、本人なりの徘徊の理由に理解を示したり、個別の生活環境を整えていくことで「周辺症状」も改善するということです。

加えて徘徊の対応の場合に大切なのは、家族のだけの対応では現実的には限界があるということを知っておくことです。徘徊が防げなかった場合に備えて、安全のための対策をとっておく必要があるかもしれません。管轄の交番や警察署に顔写真と住所氏名を届け出ておくと、保護された時の連絡が速やかです。ご近所の方やよく利用する商店などに事情を話しておくと、見かけた時にご本人に声をかけてもらったり、ご家族に連絡してもらったりできるでしょう。

認知症には「中核症状」と「周辺症状」があるということ、そして「周辺症状」に対しては、生活環境の調整や認知症の方への対応の改善が効果的、ということがわかりました。
最後に、まとめをお願いします。

一部の認知症以外は、完全に治す治療法というものはまだ確立されていません。
ただ、症状の進行をゆっくりとしたり、症状を軽くしたりする方法はあります。
そういった意味でも早期発見や早期治療、或いは認知症にならないための予防が大切な病気です。今回は認知症の症状と治療法、対応法について話させていただきましたが、次回は、予防法を中心に話させていただこうと思っています。

まとめ

  1. 「認知症」とは、複雑なことを処理する脳の働きである「認知機能」全般が急激に低下する病気で、そのために「日常生活に支障をきたす」症状全般の総称
  2. 「認知症」の治療はまだ確率されておらず、症状の進行を遅らせる方法などはあるが、そうなる前の予防が大切。

関連タグ:認知症 ラジオ 心療内科 片山先生 

ドクターデータ

片山 真一(かたやましんいち) 医師

心療内科クリニック リュミエール 院長。
おひるーなクリニックの偶数月第1水曜日担当ドクター。

施設名心療内科クリニック リュミエール
住所広島市中区西白島町20-15 メディカルプラザ西白島1F
電話082-212-2000
RCC情報
会社情報 採用情報 個人情報保護への取り組み 著作権とリンク 情報通信セキュリティ方針国民保護業務計画ご意見・ご感想
関連会社
RCC文化センターRCCフロンティア|オレンジシステム広島|中国新聞グループwebJNN系列放送局
PR
RCC中古車展示場MEGARCCリフォームセンター
広島県日韓親善協会
Copyright (C) RCC BROADCASTING CO.,LTD. All rights reserved.