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野球肘・テニス肘


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放送日

放送:2017年5月17日(水)
ゲスト:マツダ病院 奥平信義 院長
パーソナリティ:おだしずえ、井筒智彦


RCCラジオでは、隔週で水曜日「スイヨーWATCH! おひるーなクリニック」として、健康や医療に関することを専門の先生にお伺いします。
今日は「ひじの障害 野球肘・テニス肘」についてです。
サンフレッチェ広島のチームドクターでもあるマツダ病院・院長の奥平信義先生にお話を伺います。


今回のポイント

  1. 野球肘、テニス肘とは、何?
  2. どのような治療法がある?
  3. スマホの使い過ぎも要注意?

ではまず、野球肘について教えてください。

野球肘とは、投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる障害のことで、
障害部位から内側型、外側型、後方型に分類されます。

投げる動作のなかで、どういう動作が「野球肘」の原因になるのか、教えてください。

まず投球フォームについてお話しします。
投球フォームは、ワインドアップ、コッキング、アクセレレーション、フォロースルーの4つの投球相が一連の流れの中で行われます。
もう少し説明しますと、ワインドアップは投球動作の準備段階で、動作開始から足を上げた膝が一番高い位置にある時までのフェーズを指します。コッキングとは銃の引き金を引くという意味で、まさに腕を後ろに引いてボールを構える形を言います。
そしてボールを後ろに引いたトップの状態から、リリースするまでの期間をアクセレレーション、加速期といいます。ボールをリリースする直前は腕が一番しなっている状態で、肩や肘に強い負荷がかかる為、最も障害をおこしやすいフェーズです。
そしてリリース後、ボールを放してから腕を振り切るところがフォロースルーです。
野球肘はいずれの投球相においても起きる可能性があります。

もっとも障害を起こしやすいのが、アクセレーション・加速期と言われましたが、なぜ加速期に最も障害を起こしやすいのですか?

ボールをリリースする直前は、肘の関節の内側には開くような強い力が加わり、それを食い止めようとする内側側副靱帯に強い負荷がかかります。反対に、肘の外側では圧迫力が加わり、骨同志がぶっつかって骨や軟骨が剥がれたり、傷んだりします。
このメカニズムの繰り返しで障害が起こるのが「野球肘」です。

では、野球肘には、どんな症状や障害があるのでしょうか。また障害が進むとどうなるのですか?

早くからある症状で、一番多いのは肘の内側の痛みです。
肘の内側には上腕骨内側上顆と呼ばれる骨の出っ張りがあり、この部位に内側側副靱帯が付いています。投球動作の中で、内側側副靱帯には常に大きな負荷がかかっており、繰り返しボールを投げることによって靱帯はだんだん傷んできて、弛んできたり、部分断裂といった障害を起こし、最悪の場合は完全断裂という状態なります。
ところが、肘の骨が十分に成熟していない小中学生のころは、靱帯そのものよりも靱帯が骨に付着している骨端線という成長軟骨の部分を傷めます。

一方肘の外側の障害は、「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」と言われるもので、小学校高学年から中学校低学年に初発することが多いものです。繰り返す投球動作における外反ストレスにより、上腕骨小頭と言われる骨の骨軟骨が障害され、ひどくなると骨軟骨片が遊離して「関節内遊離体」、俗に「関節ねずみ」と言われる状態になります。最初は痛みがないことが多いですが、障害が進行すると運動時の痛みや可動域制限が生じ、骨軟骨片が遊離すると引っ掛かり感やロッキングといった症状を引き起こします。

野球肘の予防を教えてください。やはり投げすぎないことなんでしょうか?

野球肘は基本的に肘関節の使い過ぎによるところが大きいため、発生の予防には、練習日数と時間、投球数の制限が重要です。
具体的にガイドラインでは、小学生では、1日50球以内で、試合を含めて週200球をこえない。中学生は、1日70球以内、週350球をこえない。又高校生では1日100球以内、週500球をこえないことが推奨されています。投球制限については指導者の役割が最も重要で、指導者が率先して投球を制限させなければいけません。プロ野球でも先発投手の投球数は100球を目途にしているのに対して、高校野球では改善されてきているとはいってもまだまだ問題があります。

一方、投球フォームが悪いために肘に負担がかかりすぎるケースが多々ありますので、適切な技術指導が大切です。
野球肘は予防が可能で、初期であればほとんどが治る疾患ですので、早期発見・早期治療が重要であり、野球少年が投球時に肘の痛みを訴える場合は早めに整形外科を受診することをお勧めします。

治療方法を教えてください。

治療法は個々の患者さんで異なり、専門性を必要とします。特に野球少年の場合、保護者や監督とも十分に話し合った上で治療方針を決定すべきと思います。

悪い投球フォームとして、肘が下がっているとか、体が開いているという解説をよく聞きますが、なぜ悪いのですか。

投球のリリースの時、肘が下がっていたり、体が速く開いてしまうと、肘が体から遠くを通り、肘にかかる負担が大きくなり、障害を起こす可能性が高くなるからです。

肘を故障したプロ野球選手が「手術をする」というのを聞きますがどんな手術ですか?

よく聞かれるのが肘の靱帯再建手術です。これはトミー・ジョン手術と言って損傷した内側側副靱帯を再建する手術で、フランク・ジューブ博士によって考案された手術方法です。1974年に初めて手術を受けた大リーグ選手のトミー・ジョンにちなんで呼ばれたもので、ダルビッシュ・有、桑田真澄、松坂大輔等多くの日本選手も手術をしております。
先日ダルビッシュが勝利投手になった時、トミー・ジョン手術を受けてから今日は一番の投球でしたとコメントしていました。
その他、遊離した骨軟骨片つまり関節ねずみの摘出術や関節の骨軟骨の変形による骨棘(骨のとげ)を取り除く選手も多くいますが、これはいわゆるサルベージ手術です。

では続きまして、テニス肘について、教えてください。

「テニス肘」とは、テニスのストロークを繰り返すことにより肘に痛みが発生するスポーツ障害で、特に肘の外側に痛みがあるものをいい、上腕骨外側上顆炎とも呼ばれます。
中年以降のテニス愛好家で、シングルでのバックハンドで生じやすい障害ですが、最近は予防するための両手打ちが多くなっているようです。一方、テニスとは関係なく、手首や前腕の筋肉を繰り返し使う作業や日常生活動作で同じような痛みを発症するケースが多くなっています。
例えば、普段やったことがない日曜大工や植木の剪定をしたりして、数日後から(これは中年に多いのですが)、肘の外側から前腕にかけて痛みが出てきて、タオルを絞る、ドアノブを捻る、キャップをあける、手を下にしてヤカンを持ったりするといった日常生活動作がつらいといった症状です。
さらに最近では、パソコンやスマートフォンの使い過ぎによって、軽いテニス肘のような症状を有する人も多くなっています。

スマホの使い過ぎでも、ですか?
ではテニス肘・テニス肘のような症状の原因は、どういうとことにあるんでしょうか?

手や手首の酷使によって、指や手首を伸ばす筋肉で手の甲側の前腕にある、総指伸筋、短橈骨手根伸筋が疲労し、硬くなることにより、この筋肉が付着している肘の外側に負荷がかり炎症などを起こし、痛みを生じます。
テニスによる原因は、ラケットでのボールインパクト時の衝撃が手首に伝わり、そのストレスが肘の筋腱付着部に及ぶためで、上級者よりも、ラケットのスイートスポットに球が当たりにくい初級者や中級者の方が受傷しやすいです。
テニス以外でも、指を細かく早く動かすようなスマホゲームやパソコンなどを長期間、毎日のように続けると、一回の負担はそこまでなくても、疲労が溜まりに溜まって同じような痛みを生じます。

テニス肘かも? そう思った場合、診断方法はありますか?

簡単に行える診断方法を2つ紹介します。
これらのテストが陽性であればテニス肘と診断されます。

  • まず一つは、Thomsen(トムセン)テストと言って、肘を伸ばし、手首を下に曲げ、反対の手で手首に抵抗を加えた状態で手首を上にあげようとすると、肘の外側に痛みが誘発されます。
  • 二つめは、中指伸展テストで、肘を伸ばし、中指を曲げた状態で抵抗を加え中指を伸ばそうとすると、肘の外側に痛みが誘発されます。

テニス肘の場合の治療法、お願いします。

ほぼ対症療法で、痛みが出るような動作はしない、手首や指のストレッチ、テニス肘用のバンドを装着、薬や湿布、注射などを行います。
テニス肘用のバンドは、患部の筋腱付着部にかかる力を減少させる効果があります。

実はこの病気はなかなかやっかいで、完全に痛みがなくなるまで数か月から1年以上かかることもありますので、気長に治療してください。とはいっても痛みは徐々に軽くなり、手術まですることはめったにありません。
対策としては、パソコンを使用するときの姿勢や同じ手でずっと作業をしないなどの工夫が必要です。痛みが強い場合はテニス肘用のバンドを使用したり、作業の合間に手首や指のストレッチや前腕のマッサージを毎日行う習慣をつければ効果的です。
あまりに強い痛みが長く続く場合は、肘以外に問題点があるかもしれません。
それこそ、以前お話しした「側坐核」を刺激するのがいいかもしれません。

まとめ

  1. 野球肘は、ボールを投げる動作のし過ぎにより、肘に障害が起こる。一日に投げる球数を決め、投げすぎないことが大切。
  2. テニス肘は、手首に回転を与える動きの反復により起こる。スマホゲームやパソコンなど、指先をすばやく動かし続けることも原因となりうる。同じ姿勢や作業を長時間続けないことが大切。マッサージやストレッチも効果あり。

関連タグ:健康管理 ラジオ  整形外科 奥平先生 

ドクターデータ

奥平信義(おくひらのぶよし) 医師

マツダ病院 院長。 専門は整形外科で、「サンフレッチェ広島」のチームドクターを務める。
奇数月第3水曜日の「おひるーなクリニック」担当ドクター。

施設名マツダ病院
住所広島県安芸郡府中町青崎南2-15
電話082-565-5000(代表24時間対応)
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